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「英語の本を開いてはみたけれど、知らない単語ばかりで数ページで閉じてしまった。多読がいいと聞いて始めたのに、これは本当に意味があるのだろうか」——そんなふうに感じたことはありませんか。
多読が「効果なし」に思えるとき、原因は素材の難しさと手ごたえの見えなさにあるかもしれません。少なくともこべたろの場合は、そうでした。
この記事では、大人が多読でつまずきやすい原因と、こべたろが実際に続けられた素材の選び方、そして読んだワード数を記録して励みに変える方法をお話しします。
英語の多読が「効果なし」に感じるのは、向いていないからではありません
多読に手ごたえがないと感じたら、自分の適性を疑う前に、素材と続け方を見てみてください。
そもそも多読は、読んだ量がある程度たまるまで変化が見えにくい学び方だと言われます。始めたばかりのころは、単語を覚えた実感も、文法が身についた感覚もありません。「これだけ時間を使ったのに何も変わらない」と感じやすい構造が、もともと多読にはあります。
そこへ「早く英語が話せるようになりたい」「TOEICのスコアに反映させたい」という気持ちが重なると、変化はますますつかみにくくなります。読む力の変化は、会話やスコアより先に、静かに進むものだからです。
こべたろも、最初は書店で選んだペーパーバックを開いて、数ページで閉じました。知らない単語を調べては戻り、また調べては戻り。読書というより作業でした。今振り返ると、失敗したのは自分の英語力ではなく、本の選び方だったと思います。
ですから「多読は効果なし」と結論を出す前に、一度だけ、素材と続け方を見直してみてください。
多読は、勉強しすぎずに英語の流れを追う時間です
多読とは、英語を「勉強する」時間ではなく、英語を「読んで過ごす」時間です。ここを取り違えると、多読はとたんに苦しくなります。
精読と多読は役割が違う
精読は、一文一文の構造や単語の意味を確認しながら、正確に読み解く学習です。対して多読は、細部を多少取りこぼしても、話の大筋を追いながら英語に触れ続ける時間を指します。
どちらが優れているという話ではありません。問題は、精読の姿勢のまま多読をしようとすることです。こべたろも長くTOEICの教材で、一文ずつ意味を確認する読み方をしてきました。その癖が抜けないまま英語の本を開いたので、1ページ読むだけでも身構えてしまったのです。
「全部わかる」より「最後まで読める」を先にする
多読を提唱するNPO多言語多読は、多読の三原則として「辞書を引かない」「わからないところは飛ばす」「合わないと思ったらその本はやめる」を挙げています(出典:NPO多言語多読「多読三原則」)。
この三原則は、我慢を強いるルールではありません。読む流れを止めないための考え方です。わからない箇所を残したまま最後まで読み切ることのほうが、一語ずつ完璧に理解して途中でやめるより、多読では価値があります。
ここで一度、日本語での読書を思い出してみてください。私たちは日本語の本を、はたして100%理解しながら読んでいるでしょうか。実際には、知らない言葉を前後から察して読み流し、興味のある場面はゆっくり味わい、退屈な描写は目が滑っている——そんなふうに、無意識に強弱をつけて読んでいるはずです。
母語ですらそうなのですから、英語で100%を求めるほうが不自然です。英語でも同じように強弱をつけて読んでいい——そう割り切れると、多読はぐっと楽になります。
とはいえ、頭でわかっていても、実際に読み始めると手は止まります。大人がつまずくのは、たいてい次の3つの場面です。
大人が多読で挫折しやすい3つの原因
多読が続かないとき、原因はだいたい次の3つに絞られます。どれも意志の弱さとは関係がありません。
素材が今の自分には難しすぎる
いちばん多いのがこれです。多読を始めようとすると、つい「有名な小説」「大人が読むにふさわしい内容」から選んでしまいます。ですが、内容の格と自分が読める英語のレベルは別ものです。
目安はひとつだけ。辞書を引かずに、話の大筋を追えるかどうかです。ページの中に知らない単語がいくつも並んでいるなら、その本は今の自分には早いというだけのことです。
わからない語をすべて調べてしまう
真面目な方ほどここでつまずきます。知らない単語が出るたびに調べていると、1ページ進むのに何度も本から目を離すことになり、読書ではなく確認作業になってしまいます。
調べること自体が悪いのではありません。問題は、調べる回数が多すぎて話の流れが頭から消えてしまうことです。前の章でお話しした「日本語でも強弱をつけて読んでいる」を、ここで思い出してください。
手ごたえが見えないまま読み続けている
3つ目はあまり語られませんが、続くかどうかを大きく左右します。読んでいるのに、自分がどれだけ読んだのかが見えない。だから伸びているのかもわからない。この状態は、想像以上に気力を削ります。
こべたろも、読んだ本を数えていなかったころは、「今月は英語を読んだ」という漠然とした感覚しか残りませんでした。逆にいえば、読んだ量が目に見えるようになると、多読は驚くほど続けやすくなります。記録の話は少し長くなるので、章を分けてお話しします。
こべたろが続けられた素材の選び方
ここからは、こべたろが実際に読んできた素材と、その選び方をお話しします。共通しているのは「レベルが見えること」と「途中でやめてよいこと」の2点です。
ラダーシリーズを、下のレベルから興味のあるものだけ
こべたろが多読を立て直せたきっかけは、ラダーシリーズでした。使用語彙のレベルが段階的に示された英文リーダーで、自分がどの高さから始めればよいかが最初からわかります。
ポイントは、いちばん下のレベルから始めたことです。「さすがにやさしすぎるのでは」と思う段階から入って、読めた実感を積みながら少しずつレベルを上げていきました。結果として、こべたろにはこの入り方がいちばん続きました。
そして、興味が持てないものは途中でやめました。レベルが合っていても、内容が面白くなければ手は止まります。やめた本は失敗ではなく、「合わなかった」というだけのことです。
こべたろの場合は、abceedを課金して使っていた時期に、その中でラダーシリーズを読んでいました。何冊も読みたい人にとっては、一冊ずつ買うより負担を抑えられる選択肢になります。ただし対象タイトルやプランの条件は変わることがあるので、検討する際は最新の情報を確認してください(abceedの料金と有料プランの考え方)。
一冊ずつ手元に置きたい方は、紙の本でも電子書籍でも購入できます。まずはいちばん下のレベルから、あらすじを見て気になった一冊を選んでみてください。レベル1の使用語彙は約1,000語(中学で学ぶ範囲)に抑えられているので、英語の本を最後まで読み切る経験を初めて持つには向いています(出典:ラダーシリーズ公式「レベルと特徴」)。
レベル別ニュースなら、同じ記事を自分の高さで読める
本と並行して、こべたろはニュースを英語で読むようにもしました。物語と違って短く終わるので、まとまった時間が取れない日でも読めます。
初心者の方に使いやすいのが News in Levels です。同じニュースが3段階のレベルで書き分けられているのが特徴です。運営元の説明によると、Level 1は約1,000語、Level 2は約2,000語、Level 3は約3,000語を知っている人に向けて書かれています。難しければ下のレベルの同じ記事に移ればよく、内容がわかっている状態で一段上に挑戦することもできます。
漫画から入る選択肢もある
物語のほうが続くという方には、漫画を英語で読む LANGAKU という選択肢もあります。運営元の案内によると、『ONE PIECE』『鬼滅の刃』をはじめ80作品以上を、各作品の許諾を得たうえで英語で読めるサービスです。
絵が助けになるので、文字だけの本より話を追いやすいのが利点です。一方で漫画の英語は口語表現や擬音が多く、教材的な英文とは手ざわりが違います。合うかどうかは実際に開いてみて判断するのがよいと思います。
読んだワード数を記録すると、多読は続く
多読を続けるうえで、こべたろがいちばん効果を感じたのは読んだワード数を記録することでした。素材選びと同じくらい、いえ、それ以上に効いたかもしれません。
理由は単純です。多読は成果が見えにくい学び方ですが、ワード数だけは読んだぶんだけ確実に増えるからです。英語が上達したかどうかは自分では判断できません。けれど「先月は3万語読んだ」という数字は、誰にも否定されない事実として残ります。数字が積み上がっていくのを眺めるだけで、次の一冊を開く気持ちになれます。
正確に数える必要はありません。おおよそのワード数がわかれば十分です。次の道具を使えば手間なく調べられます。
本のワード数を調べる
| サイト | できること |
|---|---|
| Reading Length | 本のタイトルを検索すると、おおよその総ワード数と読了時間の目安が表示される。アカウントを作れば読んだ本の管理もできる |
| WordCounters | 出版された本のワード数を調べられる。作家向けに作られたサイトだが、多読の記録にも使える |
どちらも無料で使えます。読み終えた本のタイトルを入れて、出てきた数字を書き留めるだけです。
ネット記事のワード数を数える
ニュースやウェブ記事を読んだときは、WordCounter が便利です。読んだ記事の本文をコピーして貼り付けるだけで、ワード数がすぐに表示されます。こちらも無料です。
1記事あたり数百語ですから、一見わずかに思えます。ですが毎日1本読めば、ひと月で1万語を超えます。短いものほど、記録する価値があります。
読んだ本そのものを残す
冊数を残したい方には Goodreads のような読書記録サービスもあります。読み終えた本が並んでいくので、「これだけ読んだ」という手ごたえが視覚的に残ります。
なお、多読では「100万語」という数字がよく語られます。目安として知っておくのはよいのですが、達成できない焦りを生むなら、目標に据える必要はありません。ノルマとして追いかけるのではなく、貯まっていく数字として眺める。それだけで、記録は続ける力に変わります。
多読だけに、聞く・話すまで任せなくてよい
多読は、読むインプットを増やすための方法です。聞く力や話す力まで、多読ひとつに背負わせる必要はありません。
「多読を続けたのに英語が話せるようにならない」と感じるとしたら、それは多読が効かなかったのではなく、目的が違う練習に成果を求めていたのかもしれません。読む練習と音の練習では、そもそも伸ばそうとしているものが違います。
とはいえ、読むことと聞くことは、切り離さずに組み合わせることもできます。語学学習サービス LingQ は、創業者で20以上の言語を学んできたスティーブ・カウフマン氏の学習法をもとに、理解できるインプット(comprehensible input)を中心に据えて作られたサービスです(出典:LingQ公式「About」)。読むことは、それだけで立派な英語学習です。そのうえで音のインプットも足していける、という設計になっています。
LingQでは記事・書籍・ポッドキャストなどを読みながら同時に聞くことができ、知らない単語はその場で調べて保存できます。多読と相性がよいのは、読んだ語数を自動で数えてくれる点です。前の章でお話ししたワード数の記録を、自分で書き留めなくても積み上げてくれます。無料で始められますが、無料でできる範囲には制限があり、機能や対応言語は有料プランで広がります。申し込む前に、最新の条件を公式サイトで確認してください。
正直に書くと、こべたろは登録したまま、ほとんど使わずに置いてしまっていました。ワード数を手で記録するようになった今だからこそ、あらためて使ってみようと思っています。しばらく続けてみたら、その感想はまた別の記事でお伝えします。
音のほうにも手を伸ばしたくなったら、シャドーイングという練習法があります。こちらも、いきなり難しい素材から始めると挫折しやすいのは多読と同じです。始め方はシャドーイングが難しい初心者向けの4ステップでお話ししています。
読むことと聞くこと、両方を無理のない負荷で並べておくと、どちらかに疲れた日でも英語から離れずに済みます。
まとめ|効果を急がず、読み終えられる一冊から
英語の多読が「効果なし」に思えるとき、見直すべきは自分の能力ではなく、素材の高さと記録の有無です。
- 今の自分が辞書なしで大筋を追える素材まで、レベルを下げる
- 知らない単語は飛ばす。日本語の読書でも、私たちは強弱をつけて読んでいる
- 面白くない本はやめる。やめることも多読の一部
- 読んだワード数を記録して、増えていく数字を眺める
効果が出たかどうかを、短い期間で判定しないでください。判断するなら、「以前より英文を開くのが億劫でなくなったか」のほうが、自分で確かめやすい目安です。
まずは、今の自分が最後まで読み切れそうな短い英語の読み物を、ひとつ開いてみてください。そして読み終えたら、そのワード数を書き留めてみてください。その一行が、次の一冊につながります。