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「AI翻訳がこれだけ便利なら、今さら英語を勉強しなくてもいいのでは」。60代で英語をやり直そうとして、そんな迷いが浮かんだことはありませんか。私もAI翻訳はふだんから使っています。それでも、出てきた訳文を自分で読んで確かめられないと怖い、と感じた場面がありました。AIに任せられることと自分で残したいことを分けて、翻訳・添削・会話練習をどう使えば「自分の英語」を手放さずに続けられるかを、私の体験とあわせて紹介します。
AI翻訳があっても、英語を学ぶ意味は自分で決めてよい
AI翻訳が便利になったからといって、英語学習をやめる必要も、急いで完璧を目指す必要もありません。学ぶかどうか、どこまで学ぶかは、自分が英語で何をしたいかで決めてかまいません。
AI翻訳でどこまで足りるかは、人と場面によって違います。旅先でメニューを読む、海外のニュースをざっと知る、といった場面なら翻訳で十分なこともあります。一方で、相手と直接気持ちを通わせたい、訳文が合っているか自分で確かめたい、という場面では、自分の英語が少しあると心強いものです。
私が「自分で分かること」の大切さを感じたのは、以前、タイの方とやり取りしていたときでした。最初は英語でやり取りしていたのですが、途中から先方のスタッフとタイ語でやり取りすることになり、「AI翻訳でいいから」と言われて翻訳に頼っていました。ところが、どこかで行き違いがあったようで、結局は英語でのやり取りに戻しました。タイ語の訳文が正しいかどうかは、私には確かめようがありません。英語なら、少なくとも自分で読んで「ここはおかしい」と気づけます。
AIを実際に使っている人の多くも、英語学習は必要だと感じているようです。国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)が2026年3月に実施した「生成AI活用における英語コミュニケーションの実態と意識」に関する調査では、生成AIを英語でのコミュニケーションに使ったことがある20〜50代の1,032人に、「生成AIが進化しても人間が英語を学ぶ必要があると思いますか?」と尋ねています。「非常にそう思う」「ある程度そう思う」と答えた人は、合わせて84.8%でした。ただし、これは60代を対象にした調査ではなく、意識を尋ねた結果です。英語学習の効果を示すものではない点は、割り引いて読む必要があります。
AIがあるから英語はいらない、とも、AIに頼らず全部自分で、とも考えなくて大丈夫です。英語を使いたい場面を一つ思い浮かべ、そこで「自分で分かりたい」部分だけを育てていけばよい。私はそう考えています。
AIに任せられることと、自分で残したいこと
AIを使った英語学習は、「AIに任せる部分」と「自分で残す部分」を分けておくと、迷わずに使えます。翻訳・添削・会話練習のどれも便利ですが、全部をAIに渡してしまうと、自分の英語が育つ場面がなくなってしまうからです。
翻訳で英文の意味をつかむ
分からない英文に出会ったとき、AI翻訳で大意をつかむのは十分に役立ちます。辞書を一語ずつ引いて止まってしまうより、まず大まかな内容を知るほうが先へ進めます。
ただし、大意をつかむことと、細かいところまで正しく理解することは別です。ざっと内容を知りたいだけなら、訳文で足ります。日付や数字、誰が何をするのかといった大事な部分は、訳文だけで済ませず、原文に戻って確かめます。原文が少し読めれば、その確認を自分でできます。
翻訳は大意をつかむ入口として使い、大事なところは原文で確かめる。この使い分けなら、今の英語力がどのくらいでも始められます。
英訳と添削で、自分の一文を見直す
日本語を英語にするときは、英文の意味をつかむときとは別の注意が要ります。役立つのは、短くても自分で書いた一文をAIに見てもらう使い方です。最初からAIに英文を書かせるより、直された部分が自分のこととして残ります。
私は、AIに英訳させることもあります。そのとき気をつけているのが主語です。日本語は主語を省くことが多いので、入れる日本語の書き方によっては、訳文の主語が自分の意図と違ってしまうことがあります。「私が送ります」のつもりが、「相手が送る」と読める英文になる、ということも起こり得ます。訳文を読んで理解できなければ、その違いには気づけません。
出てきた英文をそのまま使うことも、あまりありません。自分では言い慣れない表現が混ざっていたら、「自分が使える、もっと簡単な表現に直して」と頼み直します。そして、最後の確認は自分でします。読んで引っかかるところがあれば、「なぜこの言い方なのか」「こちらの表現ではだめなのか」とAIに突っ込んで聞きます。
AIの英文をうのみにせず、最後に自分の目で確かめ、自分が使える形に直してもらう。この一手間が、英訳や添削を自分の英語につなげるコツだと感じています。
会話練習で、知っている表現を口から出す
AIは、知っているはずの表現を実際に口から出す練習相手にもなります。相手が人ではないので、詰まっても言い直しても気兼ねがいりません。
私は、ChatGPTを相手に1週間同じテーマについて話す練習をしてきました。月曜には言葉に詰まっていた説明が、金曜には最初から最後まで通せるようになっていることもあります。とはいえ、AI相手の練習だけで会話力が仕上がるとは考えていません。私にとってAIとの会話は、人と話す前の予行演習です。
私が英語を続けるいちばんの理由は、相手と直接話したいからです。やはりそのほうが、信頼関係を築けると思っています。AIで何度も言い直しておくことは、人と話す本番への準備として使えます。
AI英語学習を、3つの小さな練習に分ける
AIを使った英語学習は、英語日記・AI英会話・翻訳を、それぞれ別の練習として使い分けると、何をすればよいか迷いません。一度に全部を始める必要はありません。気になるものを一つ選ぶだけで十分です。
英語日記は、その日の出来事から表現を拾う
英語日記は、自分の生活の中から使う表現を広く拾う練習です。私は以前、ノートに手書きで英語日記をつけようとして続きませんでした。今は、気づいたときにスマホで1文だけ書き、あとでAIに自然な言い方へ整えてもらっています。自分が実際に書いた出来事なので、直された表現も「自分の言葉」として残りやすいと感じます。進め方はAIで英語日記を整理・添削する方法にまとめています。
AI英会話は、同じテーマを深く繰り返す
AI英会話は、一つのテーマを深く掘り下げながら、口に出す練習です。英語日記が「広く拾う」場だとすれば、こちらは「狭く深く繰り返す」場です。1週間同じテーマで話す練習をしていて感じたのは、前日に直された表現が翌日また必要になり、覚えようとしなくても口に残ることでした。使っているプロンプトと進め方はAIを英会話の下練習相手として使う方法で紹介しています。
翻訳は、分からないまま止まらず次へ進むために使う
翻訳は、英文を読むときに「分からないまま止まらない」ための道具になります。興味のある英語の記事を読んでいて、分からない文に出会ったら、翻訳で大意をつかんで先へ進みます。
そのうえで、原文と訳を見比べて、気になった一文だけを手元に残しておくと、翻訳がただの答え合わせで終わりません。訳文が正しいとは限らないので、残した一文は辞書やAIへの質問で確かめておきます。全部を理解しようとせず一文だけに絞れば、読むたびに続けられる量で済みます。
3つとも、AIが答えを出して終わりにせず、自分で書く・話す・確かめる場面を少しだけ残すのが共通点です。
「完璧にできる」より、AIで英語に戻りやすくする
60代から英語をやり直すなら、完璧を目指すより、英語に戻りやすい状態をつくるほうが長く続けやすくなります。AIは、そのための負担を小さくしてくれる道具です。
英語学習が止まりやすいのは、始めるまでの準備が重く感じられるときです。机に向かって、教材を開いて、と身構えるほど、「今日はいいか」となりがちです。AIがあれば、スマホに1文書いて直してもらう、気になった英文を訳して読む、といったことが数分でできます。
私が英語日記を手書きからスマホに変えたのも、この「戻りやすさ」のためでした。気づいた瞬間に書けるかどうかが、続けられるかどうかの決め手になったと感じています。
今日できることを一つだけ選ぶなら、たとえば次のようなものがあります。
- 今日の出来事を英語で1文書き、AIに自然な言い方を聞く
- AI相手に、一つの質問へ英語で答えてみる
- 興味のある英文を一つ読み、気になった一文だけ残す
気をつけたいのは、AIの使い方を増やすこと自体を目標にしないことです。アプリやツールをあれこれ試すより、一つの使い方で英語に触れる日を少しずつ増やすほうが、負担は小さく済みます。英語との接点を保つ考え方は、英語との接点を無理なく保つ小さな習慣でも紹介しています。1日1文でも、英語に戻ってこられた日は前に進んでいます。
AIを使うときに気をつけたいこと
AIを英語学習に使うときは、AIの答えを「正解」ではなく「たたき台」として扱うことが大切です。便利なぶん、出てきたものをそのまま信じてしまいやすいからです。
AIの英文は文法的に整って見えても、相手や場面、自分の意図に合っているとは限りません。丁寧すぎたり、逆にくだけすぎたりすることもあります。私が最後の確認を自分でするようにしているのも、そのためです。大事なやり取りほど、自分で読んで確かめられる言語で進めるほうが安心だと、タイの方とのやり取りで感じました。
ほかに意識しておきたいのは、次の3つです。
- 相手・場面・自分の言いたいことに合っているかを、自分で読んで確かめる
- 疑問に思ったところは、そのままにせずAIに理由を聞き返す
- 名前や住所、仕事の具体的な内容など、個人情報や外に出せない情報は入力しない
AIサービスの無料で使える範囲や、音声入力・翻訳・添削などの機能は、サービスごとに異なり、変更されることもあります。使い始める前に、各サービスの公式サイトで最新の情報を確認してください。
AIを疑ってかかる必要はありません。ただ、私は最後に判断するのは自分という線だけは、手放さないようにしています。
まとめ:AI翻訳があるからこそ、自分の英語を小さく育てていく
AI翻訳があれば英語はいらない、というわけではありません。かといって、AIに頼らず完璧を目指す必要もありません。AIは英語をやめる理由ではなく、英語に戻る負担を小さくしてくれる道具になり得ます。
- 翻訳は英文の大意をつかむ入口にし、大事なところは原文で確かめる
- 英訳や添削は、自分で書いた一文を見直し、自分が使える表現に直すために使う
- AI英会話は、人と話す前の予行演習として、同じテーマを繰り返す
- 最後に判断するのは自分。AIの答えはたたき台として扱う
どのAIアプリを使うか迷ったら、先に「英語で何をしたいか」を決めると選びやすくなります。読みたいのか、書きたいのか、話したいのか。目的が決まったら、まずは今使い慣れているAIから始めてみてもかまいません。
私が英語を続ける理由は、相手と直接話して、信頼関係を築きたいからです。あなたにとっての理由は、旅行かもしれませんし、好きな映画や本かもしれません。言いたい一文、分かりたい話題、楽しみたい場面を一つ選んで、今日から少しずつ始めてみてください。